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天狐あやかし秘譚

第117章 大信不約(たいしんふやく)


☆☆☆
次の日、私は体内に佐那を宿し、母と一緒に朝からスカイツリー見物に出かけることになった。

もちろん私を心配したダリは『ついて行こうか?』と言ってくれた。だけど、私が断ったのだ。理由は二つある。

ひとつは、綿貫亭で清香ちゃんや芝三郎の面倒を見てくれる人が必要だったこと。
もうひとつは、佐那が取り憑いていて私の『意志』ではないとは言え、他の人と『私』が交わる姿をダリにだけは絶対に見られたくない・・・という思いからだった。

ダリは母の『妖怪を引き寄せる力』を心配していたのだが、それについては佐那が『おそらくあれだけの量の魑魅を祓った直後なので、また集まるには時間がかかるはずだからおいそれと大事にはならないはずです!』と受けあったのだ。

いろいろ不安はあるけれども、とにかく私たちはお出かけをすることになった。

「うわー・・・こげな高い鉄塔、お母さん初めて見たっちゃ・・・」
スカイツリーのある押上駅を出て、外に出た時の最初の母の感想だった。

幸運なことに今日はよく空が晴れていた。曇りだったり、ましてや雨だったりしたらスカイツリーのてっぺんまで見えないし、展望台に上がったときの景色も半減以下になってしまう。せっかく母が来ているのだ、きれいなツリーを見せてあげたいと思っていた。

「うん、まずは展望台の下にある水族館に行ってみらん? 結構おしゃれな感じらしいけさ」
すでに展望台のチケットは午後の部で買ってある。計画では、お昼まで水族館やソラマチをブラブラし、お昼を食べ、展望台へ・・・と考えていた。

ちなみに、夜はクラシック好きの母が、コンサートのチケットを既に押さえていた。適当な時間を見計らって会場のある渋谷に移動し、そこで夕食を食べてからコンサート・・・なかなかにハードスケジュールである。

田舎暮らしの母には何もかもが珍しいようだ。スカイツリーの足元の広場でイベントをしているのを興味深そうに見ていたりもした。

「水族館! お母さん、そういうのも好きっちゃ!」

喜んでもらってよかった。それでは・・・水族館に、と思って踵を返したところで、お腹のそこから佐那の声がした。

『綾音様!綾音様!・・・ほら、あそこをご覧なさい。・・・色男が群れをなしておりますよ!』
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