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天狐あやかし秘譚

第117章 大信不約(たいしんふやく)


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【大信不約】真の信頼関係は、わざわざ言葉や文章で約束しなくても自然と保たれるものということ。
深い想いは時を超えるのよ?みたいな。
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桔梗の言葉を聞いて初めて気づく。確かに私は、背中にチリチリとしたなにか不快な感触を覚えていた。これは陰陽師たちと話す中で最近気がついたことなのだが、この感触は一種の霊感のようなもので、なにか邪悪なものが近くにいることを知らせる、言わば虫の知らせなのだ。

慌てて振り返ると、カーテンの隙間から綿貫亭の外壁が見えるが、そこをなにか黒いものがいくつもよじ登ってくるのが見えた。

「私の結界がありますから、この屋敷には入っては来られませんが・・・おそらく近隣の方はそうはいかない・・・でしょう」

その言葉に慌ててカーテンを開いて外を確認する。確かに黒い『ナニカ』がうちだけではなく、お隣の壁にもべったり張り付いてよじ登ろうとしているし、反対の隣に目を転じると、屋根の上でうそうそと何体かの影が蠢いているのが見えた。

「はわわわわっ!・・・魑魅(すだま)たちが集まってきてしまいました・・・」

佐那も窓ガラスに張り付くようにして外を見る。

「わたくしの力が及ばぬばかりに!」

そうこうしているうちに隣の家にぬるりと魑魅とやらが入り込んでいってしまう。見渡せば、いつの間にやらあたり一面に魑魅たちがいる。ここから見える範囲だけでもかなりの数に上っているので、見えないところを含めれば千くらいはいるかもしれない。

そもそも、土御門たちがよく言っていることだが、妖怪厭魅とは実はそのへんに多数いるらしいのだ。ちょっと霊感がある人ならその姿を捉えるのは容易いことだという。しかし、その殆どは大した問題にはならないらしい。

『人間の身体には免疫ってあるやろ?それと同じや。妖魅に対しても普通の人間には守護霊とかがついとって、そんじょそこらの雑霊が入り込もうとしてもやっつけてくれやさかい、問題にならへんのよ』

それを考え合わせると、あれらが一つ二つ入り込んだからといって、すぐにどうこうということはないような気がするが、あれだけの数となると話が変わる。周囲の人達が本当に無事で済むかはわからない。
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