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天狐あやかし秘譚

第116章 温慈恵和(おんじけいか)


嬉しそうにしているなら、まあいいか、と私が思いかけた、その時、サナがダリにキスをした。

マウス・トゥ・マウスで・・・

それは、一瞬の出来事。私がカチンと身体を固くし、その気配を感じたダリが慌ててサナを身体から引き離すも、サナが再びダリの首根っこにかじりつくようにして抱き寄せ、ちゅうっ♡と再び唇を押し付ける。

見た目が◯歳児のくせに、舌を差し入れチュクチュクと音を立てるやたらと官能的なキスを交わし合うふたり。その光景に、私の脳細胞が粟立ち、あっという間に真っ白になる。

なっ!・・・・

たっぷり10秒はディープなキスを交わしていただろうか、『ぷはっ』という呼吸音とともに唇が離れると、ねっとりした唾液がダリとサナの唇の間に糸を引いてぷつりと切れた。

その光景を目にした私の頭が、ようやく事態を理解し、ドクンという心臓の鼓動とともに、脳内に血液が逆流する。そして、胸の奥の奥から熱い何かが込み上げてくる。

「だ・・・ダリ!!あんたいったい・・・何してるのよぉ!!」

衝動のままに口から迸る乙女の叫び。この音量で母も清香ちゃんも目を覚まさなかったのは、奇跡としか言いようがなかった。
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