第114章 純情可憐(じゅんじょうかれん)
『二つとや 二葉(ふたば)の松は
色ようて 色ようて
三蓋松(さんがいまつ)は 上総山(かずさやま) 上総山』
てんてん、と手毬をつくような音、でも、曲がった先には誰もいない。しかし、更にその先の角に着物の裾が揺らめいて消えたように見えた。
『三つとや 皆様子供衆(しゅ)は
楽遊(らくあそ)び 楽遊び
穴一(あないち)こまどり 羽根をつく 羽根をつく』
・・・その角を曲がると、そこは縁側で、先ほどとは違う着物を着た女の子が座って足をブラブラとさせていた。それは、あの、いつも寂しそうにしていた女の子だった。
気まぐれだったのかもしれない。
それとも、なにかの必然だったのかもしれない。
もしかしたら、その子の目に映る寂しさに、何かしら共感するものがあったのかもしれない。
当時、私も誰にも言えない思いを抱えていたから。
『隣に座っても、いいですか?』
そんなふうに、声をかけていた。
「あれは、貴女だったのですね・・・土門・・・いや、杏里・・・」
だとすると、ここにこうして二人でいるのも、何某か運命だったのかもしれないですね。
眠る彼女の顔はこの上なく幸せそうだった。
きっと、私も今、幸せで満たされた顔をしているに違いない。
そんなふうに思いながら、眠った彼女の唇に、私はもう一度キスをした。