第112章 神機妙算(しんきみょうさん)
持ってきたバックパックの中から式占盤を取り出す。式占盤とは、何も知らない人が見れば八角形の手のひらサイズの寄木の板のように見えるもので、占いのための道具である。それは三重の円が組み合わさったような構造になっており、内側から天、地、人を表す『星宿』、『方位』、そして『八卦』が描かれていた。占いたい事柄を天命、地縁、人脈に分類し、それを適切に式占盤に『入力』することで運命、すなわち、その事物の状態や今後の行く末などを読み取る事ができるわけである。
占うべき人は、目の前の人、江藤二重、なのです・・・
この場所の地縁、いや・・・彼の地元の地縁のほうが適切ですね・・・そこから考えられる方位・・・そして、今日という日付、星宿と星の運行・・・
下調べしたデータ、そして、目の前にいる江藤が発している気の状態、それらを私の中にある膨大な占術の知識と照らし合わせ、式占盤に落とし込んでいく。くるくると木の板を回転させ、合わせ、また別の方向に回し合わせ、そこに立ち現れるアスペクト(様相)を記憶し、脳内で複雑に組み上げていく。
江藤は、そんな私の動きをいかにも胡散臭そうに見ていた。確かに、素人目には私が板切れで遊んでいるように見えるかもしれない。
逆に素人ではない宝生前は、私の手の動き、目の配り方までをその脳裏に刻みつけるかのように食い入るようにして見ていた。
いやん・・・そんなに見つめないで♡
若干集中が逸れそうになるが、私もプロだ。そこはなんとかやり過ごす。数分このようなことを繰り返すと、私の中でひとつの解が固まっていった。
しかし・・・これは・・・
もしかしたら、若干眉間にシワが寄ったかもしれない。私は、自身の懸念を悟らせまいと、ひとつ大きく息を吸う。そして、式占盤をテーブルに置くと、代わりに用意してあった『魂』と一文字だけ書かれている符を取り出し、右手の人差し指と中指で挟んで小声で呪言を奏上した。
「陰陽五行 歳星 死門 奇魂勧請・・・」
符はふわりとゆらぐと、私の手の中で一頭のアゲハチョウのような青白い色をした蝶が生まれる。
「え!?」