第112章 神機妙算(しんきみょうさん)
どうやら江藤も納得してくれたようだった。こうして私は、かろうじてがっつくことなく、遅めの昼食にありつくことができた。
彼が頼んでくれたのはどうやら飲茶のコースだったらしく、フカヒレスープのあとはシュウマイや翡翠餃子などの点心が5種類、それからエビチリに、最後は小盛りの海鮮チャーハンがついてきた。おそらく量的なことを言えば食べ盛りの男では物足りないけれども、標準的女子なら満足するくらいである。宝生前も私もさほど食べる方ではないので、ちょうどよい感じだった。
食べているときはもっぱら宝生前が当たり障りない時事ネタや自分の事を話したりして場を繋いでくれた。向こうは自分が質問されるのもイヤだからか、私達に対して質問をしてくることもなかった。唯一聞いてきたのは『こういった呪いを解くみたいな仕事はよく受けていらっしゃるんですか?』というものくらいだった。
『ええ、私達、陰陽寮は、それが仕事と言ってもいいくらいですから』
柔らかな笑顔で答える宝生前の落ち着いた様子に、江藤も少し安心をしたようだった。ついでに言えば、私はその笑顔の流れ弾に当たって、彼の横で密かに悶えていた。
ほ・・・宝生前さん・・・かっこよすぎるのです!
最後にデザートの杏仁豆腐をいただいたところで、私は目の前に座っている江藤の卓の上の料理が一向に減ってないことに気づいた。
「江藤さんはお腹が空いてなかったのですか?」
あ、しまった、と思ったときは後の祭りだった。だが幸いなことに、江藤はやや額にシワを寄せはしたが、『ええ・・・ちょっと食欲がなくて』と答えるだけで、特に怒り出すことはなかった。
ホッとしたところで、ウェイターが卓の上を片付けてくれる。江藤によると部屋はあと1時間以上は自由に使えるようだったので、私はここで占術を行うことにした。