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天狐あやかし秘譚

第111章 先用後利(せんようこうり)


本当にツイてないのです・・・

そもそも、もっと意識がはっきりしていれば、雨の感知など私にとっては容易いことだったのに、今日は日暮のことから始まって考え事をしすぎたのがいけなかった。窓の外を見て、ちょっと感覚を研ぎ澄ますと、雨は一応は1時間弱では小ぶりになる事がわかったので、仕方がないからここで時間を潰すことにする。

コンビニでお酒買って、お部屋で飲むかな・・・

それはとてもわびしい感じがしますが仕方がない・・・そう自分に言い聞かせていた。そんな感じでぼんやりと外を眺めていると、傍らのカップルの会話が聞くとはなしに耳に入ってきてしまった。

「カイはさ!自分勝手すぎるんだよ!」
「な!今日、泊まっていいって言っただろ?」
「言ったよ!?言ったけど、あんなホテルだなんて聞いてないよ!いつもいつも、自分のしたいことばっかり!」
「いや、俺ちゃんと言っただろ?」
「あれは言った内に入らないわよっ!・・・こんなんじゃ、先が思いやられるわ!」
「なっ!そういうこと、今言う!?」
「私の気持ちも都合も身体のことも!なんにも考えないじゃない!!」

痴話喧嘩でしょうか・・・。

20代そこそこのカップルに見える。お仕事帰りなのか、男性の方はジャケットにパンツ姿、女性の方はブラウンがかったストレートの髪の毛に、柔らかなベージュのドルマンスリーブニット、淡いピンクのシフォンスカートを合わせたビジネスカジュアルといった具合だ。

会話から察するに男の方が女とお泊りしたいと思っていて、ホテルを予約したけど、それがお気に召さなかった・・・といったところですかね?ちらっと男を見ると、かなり痩せ型で青白い顔をしている。手は血管が浮き出ているような感じで、いかにも神経質そうではある。一方、女子の方は極めて普通の女の子という感じ。

どうお気に召さなかったのでしょうね・・・

そんなことを思いながら見ていると、おや?と不思議なことに気づいた。
先程まではいなかったと思うのだが、筒袖の衣を身に着け、腰には長い裳を巻きつけた、古式ゆかしい衣裳姿の小さな女の子が二人の間をあたふたと行ったり来たりしているのに気づいた。

何でしょう、あれは・・・
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