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天狐あやかし秘譚

第108章 顧復之恩(こふくのおん)


☆☆☆
「御九里・・・自宅で1か月、謹慎!ついでにその間、減給!」
「え?・・・」

十和子との一戦から3日後、とりあえずの怪我の治療を終え、陰陽寮に出勤してきた御九里は土御門に呼び出された。その土御門から言い渡された処分がこれだった。

「・・・謹慎?」
「そうや」
「お給料・・・減る?」
「当たり前や!」

いまだ頭に包帯を巻き、骨折した右腕は三角巾で吊っている御九里は、がっくりと肩を落とした。

「そもそも勝手に単独で怪異の調査を行ったのが内規違反です。そして、厳しく言えば呪力不正行使にも当たるのですから、本当はクビでもおかしくなかったんですよ」

土御門の傍らにいる瀬良が、フォローにもなっていないことをそっと伝えてくる。瀬良としては、心の中では『まあ、そもそも、謹慎など言い渡さなくても、怪我の回復に1ヶ月はかかるでしょうから、実質は減給処分だけですけどね』と思っていた。
要は『謹慎』というのは建前で、身も心も大きなキズを負った御九里に、しっかり休めという土御門なりの優しさなのである。

「いや・・・でも・・・あの・・・」
「でも、やない!どんだけ、おまはんは周りに迷惑かけたと思とるねん!ほれ!さっさと辞令受け取って家に帰り!」

そう言うと土御門は、シッシと手のひらを振って、御九里を追い出すような仕草をする。はあ、とため息をつくと、差し出された辞令を受け取り、土御門の執務室を後にしようとした。

「ああ・・・なんだ・・・。ついでに言うとくが、例のご遺体な、司法解剖終わったからな葬儀・・・できるで」

その言葉に立ち止まると、ビクリと肩を震わせる。黙って振り返り、深々と一礼して、そのまま部屋を後にした。

「瀬良ちゃん・・・」
「分かってます。御九里様を助けてやれ・・・でしょ?」

にこりと笑うと、瀬良もまた、執務室を後にする。

あとに残った土御門は、どかりと椅子に腰掛けると、机の上に足を投げ出し、ぼんやりと天井を眺めていた。

この時、彼が思い出していたのは、訓練室の片隅で今にも泣き出しそうな顔をしていた、あの頃の御九里の姿だった。
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