第107章 末路窮途(まつろきゅうと)
キスくらいされても訳ないが、彼女の気が変わって、そのまま喉笛を噛み切られる可能性だってあるのだ。
万事休すか・・・っ!
クソ・・・土御門・・・さんっ!
俺がぎゅっと目を閉じた時・・・
「にゃあああ!!」
黒い何かが十和子の顔に踊りかかった。その一瞬、十和子が怯み、俺の手を拘束する力が緩む。その隙を見逃さなかった。
『木気・召雷一閃!』
素早く胸の木札を掴むと、それを媒介に、木気召雷法のひとつを発動する。木札からイカヅチが迸り、俺と十和子の間で炸裂した。
「ぐうっ!」
もちろん、至近距離での雷撃の爆発だ。俺自身にもダメージはあるが、こうでもしないと逃げ出すことなどできないと思った。
案の定、十和子はのけぞり、その一瞬で、俺は十和子の束縛を免れることができた。
「何だ!」
バシン、と顔に踊りかかった何かを十和子が払いのける。それは地面に叩きつけられ『ぎゃん!』と一声鳴くと、力なくぐったりと横たわる。
黒猫・・・猫神!?
ついで、十和子の身体を横薙ぎにするように、青白い光線のようなものが奔った。光線と思ったそれは水の鞭だった。
水・・・歳刑鞭・・・
「ま、間に合いましたああっ!!」
「これって、結構、ギリギリだったんじゃないですか?」
俺から見て、十和子を挟んで反対側、公園入口に近い街灯の下にその三人は立っていた。ひとりは九条水琉、ひとりは確か暦部門の田久保美玖、そして、最後の一人は日暮だった。
「田久保さんが運転うまくて助かりました!!・・・御九里さん!車で移動しているなんて・・・聞いてないですよ!!探すの、すっごく苦労したんですからね!!!」
実際、日暮が御九里が車で移動していることに思い至ったのは本当に最後の最後のことだった。田久保に言って付近のレンタカー屋を探らせて、御九里らしき人が車を借りたことを掴んだのだ。
そして、更に日暮は、田久保を通じて、暦部門への御九里のアクセス状況を調査していた。
その履歴を調べてやっと、御九里が15年前の人鬼事件の生き残りであること、そこから、人鬼が絡んでいる事件を定期的に調べていることを掴んだのだ。
御九里が探しているのは人鬼・・・しかも女性である。