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天狐あやかし秘譚

第107章 末路窮途(まつろきゅうと)


☆☆☆
ギイイィィン!

十和子の持つ鬼の爪と御九里の刃が鍔迫り合い、鋭い金属音を上げる。鬼と化した彼女の圧倒的な膂力をいなすため、御九里はわざと仰向けに倒れ、その腹を蹴り上げた。

・・・つぅう!なんて硬い!

攻撃したはずの御九里の足の方が傷んでしまいそうなほど、十和子の全身は硬くなっていた。まるで金属の塊を蹴り上げたのかと思うような感触だ。

それでも数m先まで十和子は吹っ飛ぶが、すぐに態勢を立て直し、両の手をだらりと垂らした独特の姿勢でこちらを睨みつけてくる。

御九里も睨み返すと、手に持っている大太刀、鬼丸国綱改(おにまるくにつなあらため)を肩に担ぐように持ち、左手で刀印を結んだ。

「皇天上帝 三極大君 日月星辰 八方諸神 司命司籍
 左に東王父 右に西王母 五方五帝 四時四気 金気邪を祓い給へ」

キィイインと高周波で刀身が震える。呪力を検知する者が見れば、そこに微かな金色の光を見ただろう。それは天帝の力だ。七星辰の力を借り、金気を媒介として発動される降魔の権能。その力を刀身にまとわせ敵を討つ、御九里が使う術式の中では最高ランクの技。

振動が最高潮に達する。技の発動に応じて身体の能力も活性化され、普段よりも筋力、跳躍力などが飛躍的に増す。その増大した力を込め、一気に大地を蹴り、十和子との距離を縮める。

「金気・金刀一閃!」

跳躍し、十和子を捉えた瞬間、右手に握った太刀を袈裟懸けに一閃する。

殺った・・・

しかし、十和子は人間離れした反射神経で身体をのけぞらせ、さらに、その斬撃を硬質化した腕で受けきってみせる。

ギィン!

再び金属がこすれ合うような音が響き、剣戟がぶつかった箇所から火花が散る。ニタあっと笑った十和子が無造作に差し出す右手が御九里の腹に触れると、ドン!と腹の奥に響くような衝撃が走った。

「ぐはぁ!」

物理法則に反したようなその衝撃は、御九里にあたかも重量級のボクサーのパンチを受けたようなダメージを与える。たまらず、右手の刀を振り回し、距離を取った。

クソ・・・なんて・・・

御九里も祓衆の陰陽博士だ。それなりに強い怪異・妖魔とも戦ってきた。しかし、目の前にいる十和子の強さはその中でも群を抜いている。

乙種・・・その中でもかなり高いレベル・・・
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