第106章 貪愛瞋憎(どんないしんぞう)
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『ん?あんたかい?俺を探してるってやつは』
暮れなずむ街、飲食店の立ち並ぶ区画の細い裏道で、御九里が一人の男と相対していた。男の名は金地大輔。奥田が死ぬ直前に連絡を取った人物だった。金地はロン毛といえば聞こえはいいが、どちらかと言うと、単純に、長らく床屋にいかず手入れの行き届いていない長い髪を無造作に後ろで束ねただけという、貧相な顔をした男だった。革ジャンを羽織ってカッコつけてはいるが、腕につけている金の鎖状のブレスレットも妙に浮いており、なんとなくチグハグな印象を与える服装でもあった。
『あぁ・・・なんだよ、俺は関係ねえよ?あいつ・・・奥田から電話貰ってダチ誘ってシャインに行ったら、パーティルームであいつが死んでたんだよ。逃げた理由?そりゃ、お前・・・警察沙汰に巻き込まれたくなかったからよ。・・・なんでぇ、そこまで調べてるのかよ。ああ、そうだよ、寺岡に金握らせて俺等の姿が写っている防犯カメラの映像部分だけ別の日の奴と差し替えさせたんだよ』
御九里が別に自分は警察の者ではないし、あんたに興味があるわけじゃないと告げると、金地はあからさまに安心したような顔をする。
『・・・あいつが言っていたこと?別に大したことじゃねえよ。女がいるから来い、喰いもんと酒持って・・・って。まあいつものことなんだよ。女にちょっと・・・な、あれして、ホテルに連れ込んで、俺達と遊ばせてくれる。まあ俺は喰いもんとか提供するけど、金を取られていたやつもいたな。必要経費、ってなこと言ってさ。』
俺は無関係だ、と言い残してその場を立ち去ろうとした金地の胸ぐらを御九里がぐいと掴んで、壁に押し付ける。
『や・・・やめろよ、あんちゃん・・・ちげーよ、本当に何も知らねんだよ・・・や、やめろ・・・おい・・・本当に、本当だってば・・・ぎゃ・・・いてぇいいててててて!!』
数発の殴打音とうめき声、小声での会話の後、ドサリと地面に人が倒れる音がした。裏道の陰から何食わぬ顔をした御九里が現れる。彼はそのまま夕暮れの歓楽街に繰り出す人波に飲まれて消えてしまった。