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天狐あやかし秘譚

第105章 昼想夜夢(ちゅうそうやむ)


ケタケタと笑って男は杯を煽る。そして、御九里に尋ねもせずに、もういっぱい注文していた。

「え?ヤサ?知らねえな・・・あ、ヤマさんなら知ってっかな?ん?ああ、いいぜ、紹介してやるよ・・・ああ、だけどな・・・?」

男が皆まで言う前に、御九里は更に一万円札を胸ポケットに突っ込んだ。気を良くした男はメモ帳に電話番号を走り書きしてちぎってよこす。

「ほれ、ここだ。こいつに電話して、仙北新聞の喜多川の紹介って言やあ、まあ、悪いようにはならねえよ。後はうまくやるんだな・・・って、なんだ、もう行くのか?」

ガタン、と御九里は黙って席を立つ。そのままポケットに手をつっこみ、薄暗いバーを後にした。

あとに残った男、喜多川はお代わりしたバーボンを舐めながら、つまみのナッツを口に放り込んでいた。

「なんだろね・・・今更、あんな事件掘り返してよ・・・それに、15年前からの行方不明者リストって・・・」

まるで売れねえミュージシャンみてえだが、一体ありゃ、ナニモンなんだ?

そんな疑問が頭をよぎったが、懐が温まったという事実の前にはそんなことは些細なことだったようだ。今日はまだ日が高い。この後、この余禄でもって女でも買ってみるかと、そんな考えにすぐ関心が移っていってしまった。
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