第102章 能鷹隠爪(のうよういんそう)
「あ・・・やだ!私ったら、ごめんなさい・・・でも、でも・・・すごくうれしくて、あの、だ・・・だから・・今度、デー・・・じゃなかった、お食事をお・・奢らせてください!」
ペコリと頭を下げると、ぴゅーっと走り去ってしまった。おそらく、自分の衆の事務室に行ったのだろう。
一体あれは何なんだと、日暮を見送っていた御九里に、背後から突然声がかかる。
「あーあ・・・完全にロックオンなのです」
「ひゃああ!!」
それは、占部の長である土門杏里だった。
「な、土門・・・様!?」
ーなんであんたまで祓衆の事務室に来てんだよ!
その言葉を御九里は必死に飲み込む。土門はにやにやと笑いながら、座っている御九里の肩に肘をかけて言った。
「美澄は処女なのです・・・そして、すっかり、君にほの字なのです・・・ふふふふふ・・・三十路の処女に惚れられたとなると、これはもう、結婚しかないのです・・・ふふふふふ・・・・」
不気味な笑いを残しながら、土門はそそっと去っていった。
ーそ・・・それだけを言いに!?
呆然とする御九里。
その手から、ぽとりと、先程日暮から渡された手提げが床に落ちた。
紙袋の中身は、愛がいっぱい詰まった、可愛らしいハート型クッキーの詰め合わせだった。