第102章 能鷹隠爪(のうよういんそう)
これは、鴻上が開発した「絶対にバレない違法薬物」があってこそできる芸当だった。いくら摘発されても、普通に調べればただの「ラムネ」だからである。
捕まっていた少女たちは、幸いなことに『赤色』の支配下にあったときのことを殆ど覚えていないとのことだった。ただ、念の為、しばらくは検査及び監禁に伴う身体的、精神的影響の精査・治療のために宮内庁病院に入院させることになっている。身体的な損傷の治療と、トラウマ記憶の消去を行う予定と聞いている。
ー土門は何も言わなかったが、当然、日暮もそれなりの目にあってるはず・・・じゃねえのかよ・・・?
御九里はじっと日暮を見ていた。日暮はなんだか楽しそうに、持っているリュックから何かを取り出していた。
「お前、身体とか・・・大丈夫なのか?」
思わず声を掛ける。
「はい!大丈夫です!それから・・・あの・・・」
手に可愛らしいデザインの手提げの紙袋を持っていた。何やら顔を赤らめてモジモジしている。
ーん?
「た・・・助けてくださって・・・ありがとうございます!
ほ、本当は、手作りにしたかったんですけど・・・こ、今度持ってきますから!」
ずい、と手提げ袋を差し出され、思わず御九里は受け取ってしまう。
ーえ?え?
「私、捕まってるときのこと、殆ど覚えていなかったんです・・・でも、怖くて、心細かったのは覚えています。多分ひどいこと、いっぱいされたんだと思うし、あのままだったらきっと私、帰ってこれなかった・・・でも・・・
目が覚めたら・・・」
月明かりの中、あなたがいた・・・
日暮がうっとりと御九里を見つめる。その手は胸の前で組まれ、目はうるうると濡れたように輝いていた。