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天狐あやかし秘譚

第12章 甜言蜜語(てんげんみつご)


☆☆☆
「へー、あれなん?例の子のお家って」
遠目に築30年は経っているアパートを見ながら、土御門様が言う。黄色、赤、オレンジの色彩が踊る格子柄のシャツに、生成りのパンツという相変わらずの派手派手しい格好だ。もし誰かを捕まえて、この人の職業なんだと思いますか?と言ったら『公務員』などという答えは絶対に得られないだろう。

よくてスタートアップ企業の若社長、悪けりゃ極道だ。

ましてや陰陽師です、などと言っても絶対に信じてもらえないだろう。
格好、大事。

「はい、そうですね。調査によると、住んでいるのは3階の2号室。名は浦原綾音、です」
まあ、そうは言っても仕事だ。上司に聞かれたことには正対して答えねばならない。

「で?あそこにいんの?あいつも」
「そうですね」

占部衆がこっそりと撮影した写真が入った報告書を示す。土御門様はざっと目を通した。
「これ、牙(が)っちゃんがいうてたのよりも、なんやメンバー増えてない?」
牙っちゃん・・・?ああ、御九里様のことか。御九里牙城(みくりがじょう)、陰陽寮実戦部隊である祓衆の中でも比較的若手である。若手と言っても位階のない私なんかより数段上の実力を持つ。その人を『牙っちゃん』って、あんた。

報告書とは別に挟まれている最新の写真は今日撮ったもののようだ。
先頭にショートボブの20代前半くらいの女性、ベージュを基調としたチェックのパンツに、生成りに近い色のロゴの入ったトレーナーを着ている。なかなかに可愛い方ではないだろうか。その後ろにジーパンに灰色のロゴ入りトレーナー、野球帽を被った7〜8歳位の男の子とチェック柄のパンツにパフスリーブっぽい白い袖の付いたあずき色トップスを着た4歳位の女の子が続く。
そして、最後には、細身なのでそれほど大柄で威圧感があるようには見えないが、おそらく身長が180センチ近くあるであろう男性が続いていた。焦げ茶のスラックスに白いワイシャツ、そこにやはり茶系統の色合いのジャケットを纏っている。顔が、やたらいい。やや切れ長の目に整った目鼻立ちをしている。ファッションモデルですと言われても納得しそうだ。
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