第7章 一途
やがて、三日月さんはいつもの柔らかな声音で、私に言う。
「主。少し、耳を塞いで、後ろを向いていろ」
(………そんな!!)
動けない私の背後に、影が落ちる。
豊前さんが何も言わずに近づいてきて、後ろから私の目を覆った。
冷たい手だった。
視界が奪われ、音だけが残る。
雪を踏みしめる、わずかな衣擦れ。
刀が構え直される気配。
「……ありがとう」
それが鶴丸国永の最期の言葉だった。
私は、生まれて初めて、金属が折れる音を聞いた。
それは、鋭くも、鈍くもなく。
ただ、静かで、哀しい音だった。
雪がやがて弱くなってくる。
豊前さんの手は、しばらく私の目を覆ったままだった。
私は、ただ、その冷たさを感じながら、立ち尽くしていた。
泣いているかどうかさえ、分からなかった。