• テキストサイズ

【刀剣乱舞】逃げてもいいですか?【完結】

第8章 神のみぞ知る


 その後のことは、あまり覚えていない。

 瘴気の影響か、霊力不足がたたったのか、それとも、あまりにも多くの出来事を一度に突きつけられたせいか。
気付いたときには、私は意識を手放していた。

 豊前江に背負われ、ゲートを潜ったような記憶だけが曖昧に残っているが、それも夢の中の出来事のようだったから事実なのかは分からない。
それでも、なんとか夜明けを迎える前に本丸を離れることはできたらしい。
………本当に、濃くて長い一日だった。


 次に目を覚ましたとき、そこは政府の療養用入院棟だった。

 全員は無事なのか。
本丸は、どうなるのか。

 起きるなり矢継ぎ早に問いかける私を、担当の職員は一瞬、珍しいものを見るような目で見つめ、それから穏やかに答えてくれた。

 刀剣男士たちはすでに政府の緊急手当を受け、回復していること。
 本丸は瘴気祓いの専門部隊が入り、その後、再び運用される見込みであること。


「……私は、あの本丸に戻れますか」
 自分でも驚くほど小さな声だった。

 担当さんは微笑み、迷いなく頷いた。

「もちろんです」

 その一言で、胸の奥に張りつめていたものが、ようやく緩んだ気がした。

 全てが終わって、新しく動き出すんだ。
そう素直に思えた。


 退屈な二週間の療養を終え、私はついに本丸へ戻ることになった。

 待っていたのは、事態報告のための大量の書類と、慌ただしい日常だったが、不思議と逃げたいとは思わなかった。

 折れた刀の分まで、生きる。
二度と、あんな悲しみを誰にも味わわせない。
 
 いつのまにか私は少し変わっていたのかもしれない。


 本丸には、様々な刀派の様々な刀が顕現し、2週間前に訪ねた時とは打って変わって、すごく騒がしい。
 世界を閉ざしていた雪はいつの間にか止み、空は澄んだ青を取り戻していた。

 こんな日々が、いつまでも続けばいい。
そう願いながら、私は今日も執務机に向かっている。
/ 83ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp