第2章 雪国
「さて、審神者よ。いきなりで申し訳ないが、頼みがある。くだんの不在の一振りについてだ」
三日月さんが流れるように続ける。
「その刀は今朝重傷状態で見つかったんだ。手入れを...」
失礼かもしれないが彼の説明を遮って私はまた叫ぶような調子で言った。
「私で治せるなら今すぐにでも治しますから!!手入れ部屋はどこでしょう!?」
私と三日月さんは大急ぎで手入れ部屋に向かった。先ほど広間に来る時の何倍も早足で(なんなら軽く走る勢いで)、手入れ部屋に向かい、私は審神者としての初仕事をすることになったのである。
挨拶や説明はまだ終わっていないとか、天下五剣を走らせていいのかとかそういう問題は放っておいて、怪我人がいるなら一刻も早く回復させなければならない。審神者が、戦場に出る彼らにしてあげることなど数少ないが、傷ついた彼らを癒すことはできるのだから、それを怠る訳にはいかない。
余談だが、その時、いきなり三日月さんの腕を掴んで走り出した私を見て、「フォームはなっちゃいねーがなかなか良い走りだ!」と豊前は目を輝かせ、
「なんで三日月さんだけ新しい審神者さんにいきなり気に入られてんの?説明も全部やっちゃうし…」と加州が冷ややかな目をして、
山姥切長義はそんな2人を嗜めた後、思案顔で私たちの後ろ姿をじっと見つめていたとか、いなかったとか…