第7章 一途
胸の奥が、ひどく冷たい。
それでいて、熱もある。息をするたび、肺の内側がざらつくような違和感が広がっていく。
瘴気だ、と理解した瞬間には、もう意識の縁が曖昧になっていた。
ずっと、本丸に溜まり続けていたもの。
私が壊して、私が隠して、私が見ないふりをしてきた、その澱が鶴丸の体を、私の意識を蝕んでいる。
視界の端で、三日月がこちらを見た。
「……どうした、鶴丸?」
柔らかい声だった。
その声を聞いた瞬間、胸の奥で何かがひび割れる音がした。
あぁ、そうだ。
この男は、何も知らない。
私が記憶を奪った。
私が、彼を真実から遠ざけた。
それなのに。
それなのに、この本丸が終わるその瞬間に、最後に刃を向ける相手として、これ以上相応しい者がいるだろうか。
笑っているつもりだった。
でも、頬が引き攣っているのが自分でも分かる。
「驚いたか?」
口が勝手に動いた。
次の瞬間、足が踏み出ていた。
雪を蹴り、間合いに踏み込む。
刀を振り上げた腕は、迷っていない。
……ああ。ここで全て終わればいい。
三日月を斬って、斬られて。
この歪な本丸も、私も、全部。
だから。
止まれなかった。
刃が振り下ろされる直前、
三日月の目が、わずかに細められた。
驚きでも、怒りでもない。
ただ、静かな理解。
「……あぁ。」
やめて。
そんなふうに、すべてを受け入れた顔をしないで。
雪の中で、刃と刃がぶつかった。
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