第6章 さよならだけが
結論から言わせてくれ。
俺を庇って、あいつは目の前で折れたんだ。それが正史だ。
あの瞬間の音が今でも耳にこびりついて離れない。
金属が軋み、限界を迎えるその音は、嫌に乾いたものだった。
主に報告もした。呆然とした顔で事態を受け入れられないようだったから、唇をかみしめて、何度も説明しなければならなかった。
なのに。
執務室から出てしばらく経った頃、気付くと俺は再びあの戦場に立っていた。
でも今度は、出陣はいつも通り終わって、部隊は欠けることなく帰還して。
当たり前の顔をして鶴丸国永が生き延びた。
俺の記憶がおかしいのだと思った。
夢だったのだと、戦の疲れが見せた幻覚だと、そう思い込もうとした。
けれど、時間が経つにつれて、記憶は薄れるどころか、逆に輪郭を帯びてきた。
突き飛ばされたときの強い力の感触。
白い背中が血に染まっていく様。
最期に何か呟いたこと。
考えに考えたが、埒が開かない。俺は鶴丸国永に聞くことにした。……問い正すというより縋るような質問だったように思う。
「本当に何もなかったのか」「俺の見たのは幻覚だったのか」と。
返ってきたのは、笑みだった。
その後、怪訝そうに眉を上げて、彼は何か言いかけた。いかにも俺の問いかけを笑い飛ばそうとするようなその表情に俺は安堵して次の言葉を用意した。
「そうだよな、おかしなことを言った。すまない」
…しかし、それは叶わなかった。直後に刀を向けられたからだ。
言霊を使われたのだと理解したのは、体が動かなくなってからだった。
声が出ず、視界が歪み、意識だけが沈んでいく……
「……以上が、俺の知っているすべてだ」