第5章 正体
「偽物くんはここ最近、様子がおかしかった。ここ最近というのは、審神者が失踪してからという意味だよ。
彼はあまり隠し事ができる性質じゃないからね…政府の元監査官として、本歌として、彼のことをしばらく観察することにしたんだ」
本歌として…か。本歌として、写しの国広を心配したからこそ観察したと捉えるべきか。この本丸で、2振りの関係はそこまで悪くないように思う。長義さんは目を覚まさない国広さんのことを随分心配していたようだし。
「しばらく観察して分かったことがあった。偽物くんは執務室に近寄ることを恐れた。わざと遠回りしたり、執務室の前を通る時は早足になったりするんだ」
お、おう……思っていたよりしっかり観察していたらしい。刀剣男士としての偵察スキルの活かし方を些か間違えている気はするが…
でも、こうして国広さんの意識がない時でも、彼についての情報を知れるのはありがたいから結果的に彼の行動は肯定されるべきものなのかも。
私が少し苦笑していると、山姥切長義は慌てたように言った。
「いや、明らかに偽物くんの様子がおかしいから仕方なくだったんだ…!決して彼が心配だったとかそういう理由じゃなくて、写しが何か不始末を起こしたら本歌の俺の評価まで下がってしまうかもしれないから…!」
「…そういうことにしておきます。続きを」
目の前に慌てている人間がいると、人間は冷静さを取り戻すらしい。私は、淡々と彼の続きを促した。
「誤解は後で必ず解かせてもらうからね…!ただ、今は時間がないから話を先に進めよう。
……偽物くんはもうひとつ不可解な行動を取っていた。それは、なぜか鶴丸国永を見る度に怯えるような顔を見せていたこと。
幽霊でも見たような、そんな表情だ」
鶴丸国永…………。ここで名前が出るとは。
「なぜ国広さんが鶴丸さんに怯えていたのか、心当たりはありませんか?」
「それは俺も疑問に思ったんだ。偽物くんと鶴丸国永は同じ部隊で、以前はそれなりに親しくしていた筈だ。しかし、事件が起きてから鶴丸国永は部屋に篭りがちになり、国広も彼に対して怯えるような顔を見せるようになった。
……絶対に2人は何かを隠している。君もそう思わないか?」