第5章 正体
誰も喋らない空間で豊前江は1人落ち着かなさそうにしていた。
彼が気を利かせてなにか話題を作ろうと口を開きかけた時、別の人物が沈黙を破った。
山姥切長義である。
ついに、貝のように閉じられた桜色の美しい唇を開くことにしたらしい。
「審神者。今まで黙り続けていてすまなかったね。…詫びというわけでもないが、俺からも情報を提供させてほしい」
情報。今は喉から手が出るほど欲しい。なんだろう。
「ただ、審神者と2人きりで話をしたいんだ。薬研と豊前は少しの間で構わないから席を外してくれないか。…頼む。」
山姥切長義は、美しいが高慢な性格をしていると聞いた。そんな彼が、この短い時間に謝ったり他の男士に頼みごとをしたりしている。これは只事じゃない。
同じ気持ちが2人にも湧いたのだろうか、薬研藤四郎と豊前江は顔を見合わせた後、長義さんに向かって頷いた。
「何かあるといけねーから、俺たちは少し離れた廊下で待機してるぜ」
と豊前江が言い残し、2人は部屋を出て、戸を閉めた。
山姥切長義と2人きり……いや、寝てるとはいえ国広さんもいるのだが。
緊張で手汗が止まらない。先ほどから忘れていた息苦しさも戻って来たせいもあって、身体中にじっとりと汗をかいていた。
「これはあくまで偽物くんの様子を見ていた、俺の見解に過ぎないんだが…」
と前置きをして、彼は語り始めた。
外の雪は、今も、吹き荒ぶ。