第5章 正体
手入れ部屋は重い空気に包まれていた。道中、三日月さんと手入れ部屋まで走った時の思い出しかけてやめた。
まだ、山姥切国広は目覚めておらず布団に横たわっている。
薬研藤四郎が熱を測ったり脈を見たりしているが、特に異常はないようだ。
山姥切長義は、布団の傍に静かに座している。
誰も話さないので私はこれまで起きたことを1人振り返ってみる。
最初に現れた鶴丸国永に「あの人を救ってくれ」と頼まれた。
話を聞くうちに、前の審神者がある日突然消えたことが分かった。おそらく「あの人」というのは彼女のことを指しているだろう。
三日月宗近によると、審神者は消えたものの、神隠しは行われていない。
そして、審神者が消えたので、本丸に残る霊力が残り少ない。本丸に顕現する刀が少ないのはその影響。あくまで私の推測だが、顕現していない刀の分の霊力を、今も残っている刀に渡しているんだろう。
そして、審神者がいなくなってからというものの、刀剣男士に異常が出始めている。突発的な記憶喪失だったり、以前と人が変わったようになったり。
また、審神者の失踪と似たような状況の第二の事件も発生しており、山姥切国広が重傷で発見されている。手入れはしたが、いまだ彼は目覚めず、経緯も犯人も不明。
本丸には瘴気が微かに漂っており、結界は不完全。そして、こんのすけは2体行方不明。
…考えれば考えるほど、この本丸はどこか壊れかけているように感じる。誰か、悪意を持って壊している人がいるかのように。
そんな私の予想はさておき。
なぜか三日月宗近は私の真名を知っていて、彼曰く「本丸内に歴史修正主義者と繋がる人間がいるかもしれない」。しかし、その三日月宗近本人に関しても、現状、意図的に情報を伏せている可能性が高く、あまり信用ができない。私の身の安全に関しては保証してくれているが。
前審神者に関しては優秀で霊力も多く、鶴丸国永と恋仲だったそうな。残された鶴丸国永は事件以来部屋に篭りがち。
本丸にいる刀の多くは私に対して協力的な一方で、山姥切長義は何も語らず、江雪左文字、山鳥毛、大包平に関しては、いまだ詳しいことが分からない。
状況をまとめるとこんな感じだろうか。ううん、何も分からない。