第2章 雪国
「っっ!!」
声も出せずに飛び上がるほど驚いてしまう。5センチくらいなら実際に飛んでいたかもしれない。
遠くの景色にフォーカスしていた視線をゆっくりと下げて、自分の靴のあたりを見遣ると、先ほどの音の正体に気づく。
管狐、こんのすけがそこにいた。
全く気付かなかった。いつからそこにいたんだろうか...
「ゲートの中で合流してからずっと審神者様の足元にいましたよ。この本丸は現在雪の景越に設定してあるみたいですね。おかげでこんのすけは凍えそうです」
私の心を読んだかのようにこんのすけは答えた。
(こんなに可愛いこんのすけをどうして気付かなかったんでしょうね?これだからポンコツは…)とでも言いたげに彼(性別は知らないが…)はじとっと私をねめつけた。
どうやらこの個体は感情豊かな狐らしい。雪の降る音しかしない静かな空間にいると頭がおかしくなってしまいそうで怖かったので、正直こんのすけの存在は私の心に余裕をもたらした。
彼に対して軽く挨拶を済ませ、
「とりあえず私はあの建物に向かえば...」
と、尋ねかけたところだった。
本丸の玄関の引き戸がガラガラと音を立てて開いたのだ。ついに、刀剣男士との対面のその時がきたらしい。
身震いが止まらない。相手は帯刀している神様である。怒らせないように慎重に接しなくてはならない。
現れた人影は、雪で視界が悪いのと、そこそこの距離があるので定かではないが、背丈は私より高そうだ。
その人は玄関のひさしに出ると、持っていた傘をばっと開いた。
遠目に白っぽい格好をしており、傘も白かったので、雪に紛れてちゃんと見えないなとぼんやり思う。
シャラシャラと鎖が揺れる音が近寄ってきて、ようやく気付いた。そうか、白と言えば。彼が出迎えてくれるのか。