• テキストサイズ

【刀剣乱舞】逃げてもいいですか?

第2章 雪国


 時空を渡る長いゲートを抜けると、雪国であった。

 私は眩しさに目を細めた。雪は日の光をアスファルトの何倍も強く跳ね返すと聞いたことがある。
 温暖化の進んだ現世の日本ではもう雪なんて何年も降っていない。こんな、綺麗で、閉鎖的で、心が重くなるような銀世界を見るのははじめてだった。雪は地上の何か大切なものを押し隠すようにしんしんと降り積もっていた。

 辺りをきょろきょろと見回してみる。

 本丸には色々な建築様式のものがあると習ったけど、ここは昭和期ぐらいの日本の一軒家を参考にしているようだ。とても大きいが建物自体は普通の屋敷に見える。異質なのは家の周りを高い石垣のようなものでぐるっと囲ってあること。おかげで中の様子はほとんど伺えない。本丸は、子供の描いた絵のように、ぽつんとそこに建っていた。見渡す限り、これ以外に他に人が住むような建築物はなさそうだ。

 石垣の外の空間には畑や厩舎や野山が広がっている。畑と思わしき場所はいささか不自然なくらいに雪が積もっていないので、農作物を育てるためになにか雪に対して干渉する術がかかっているのかもしれない。

 刀剣男士が建物の中にいるはずなのだが、目視できる範囲に雪が踏み荒らされた形跡はまるでなかった。こんな雪が降っていると外に出ることも少なくなってしまうのだろうか。それとも出かけたとしても雪がすぐにかき消してしまうのだろうか。彼らはどんな気持ちで今、私の存在を迎えているんだろう。政府が事前に通達はして、引き継ぎに了承をもらっている筈なのだが不安である。

 不意に途方もない心細さを思い出して落ち着かない気持ちでいると、足元でなにかがぶるぶると動いた。
/ 13ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp