第4章 探偵ごっこ
彼はそういうなり私の左腕をぐいと引っ張った。
体幹皆無の私は案の定バランスを崩し、三日月さんの方向へ倒れた。
「うわっ!」
咄嗟に色気のかけらもない悲鳴をあげてしまう。
瞬間、私は三日月さんに抱き締められた。
(いやいやいやいや、どういう状況だよ、そもそもこれハグじゃないし...!?)
脳内でキレのない突っ込みを繰り広げつつ、現実ではテンパリすぎてフリーズしてしまう。
「おやおや」
「三日月さん、それ“はぐ”じゃなくて、"ばっくはぐ”になってるぜ」
「仲がよろしいことで」
呆れまじりに、にっかり青江、豊前江、薬研藤四郎が口々に野次を飛ばす。
(いや、だから絶対に勘違いされてるって!!
急にどうした!?
離してくれ、三日月宗近!!!!)
この時、私は真剣に言霊を使う事を検討した。
全力で彼の腕を振り払おうとしても、抱き締める力に敵わないからなかなか出られないのだ。
結局、
「おーい、ご飯持ってきたんだけどこれどういう状況!?!?」
と、慌てた加州清光が三日月さんを引き剥がしてくれるまで、私は彼に抱き締められ続けた。
恋愛的な抱擁というより、幼子がお気に入りのぬいぐるみを離さないのに近い感覚だったのは私の気のせいだろうか?
相変わらず、三日月宗近の真意が読めない。
追及して藪蛇をつつくのが怖かった私は、何もかもを忘れることにした。
そう、腕に残る狩衣の柔らかさも、背中から伝わるかすかな温度も、耳元にかかる吐息も、強く香るあの懐かしい匂いも、すべて、忘れることにしたのだ。
気にしない気にしない……
(いや、無理だが!?!?!?!?)