第3章 どこでもない場所
「さて、先ほどは取り乱しましたが…」
私は向き直って、再び三日月宗近と相対する。
彼の笑いの波も引き、きりりとした顔に戻ったタイミングを待ち、私はひとつの疑問を投げかける。
「まだ肝心の、なぜ貴方がここに連れてきたのかが分かりません。答えてもらえますか?」
「あぁ、勿論」
私は静かに唾を飲んだ。
「先ほど言った通り、審神者が失踪した瞬間に外部から攻撃を受けた可能性は低い。となると、今回の件は内部の刀剣男士の仕業であると思われる」
やけに断定的な口調で彼は言った。
「本丸の中でこの説明をしても良かったんだがな。政府は、念のため、執務室の状況や『外部犯の可能性は低い』という事実を刀剣男士には伏せている。知っているのは失踪当時、近侍に任命されていた俺だけだ。
本丸の中で話すと情報が漏洩する可能性があった。それがひとつ目の理由になる」
彼が近侍であろうことは薄々感じていた。挨拶の時、上座で私の次席にいたのが彼だったからだ。
三日月宗近は嘘をつかない。含みのある言い方で混乱させたり、あえて核心に迫る部分を隠したりすることはあれど、偽りの言葉を述べることはない筈だ。私は自分の直感に頼って彼の言葉を信じることにした。
「分かりました。では残りの理由は…?」
「…そうだな、単刀直入に言おう。この本丸の中に間者がいるかもしれない」
間者、つまり歴史修正主義者のスパイがいるということか。
「…根拠は」
「本丸内にわずかな瘴気が漂っていることは説明しただろう。微量すぎて、どこが大元なのかは、まだ政府も俺たち刀剣男士もまだ把握できておらん。が、原因となる穢れを持っている者もしくは呪具などが本丸内に隠されていることはまず間違いない」
なるほど。火のないところには煙は立たないというが、穢れのないところにも瘴気は現れない。
「穢れを持った者ないし呪具が審神者の失踪と直接関連しているかは不明だが、敵と内通している者がいる可能性がある以上、警戒すべきであることは明白だ。あと…」
あと…?まだあるのか…これは思ってる以上に本丸の闇が深いぞ。
「瘴気を浴び続けると人間は狂ってしまうからな。審神者が今のこの本丸に居続けられる時間に制限がある。俺の計算だと大体明日の夜明けまでが限界だ」
ねえ!!お願いだから。一番怖い情報最後に持ってこないで!!
