• テキストサイズ

【刀剣乱舞】逃げてもいいですか?

第2章 雪国


 どれだけの時間がかかったかは忘れてしまったが、なんとか山姥切国広の傷を癒すことに成功した。しかし、彼は目を覚まさなかった。後に分かることだが、彼が覚醒するのは、事態が大きく動いたこの半日後である。
 
 そんな未来の話はつゆ知らず、ようやく手入れが終わったので、私は天井を見上げながら大きく伸びをした。
「あ゛ー疲れたーー」
思わずおじさんのような声が漏れる。

 そうである。前述の通り、私はこの部屋に眠っている刀以外にもう1人いることをすっかり忘れていたのだ。

 しかし、次の瞬間、私は気が付いた。血の匂いが薄れてきて、後方から何かいい匂いがすることに。
ギィーっという音が聞こえそうなくらい、ゆっくりと機械じみた動きで首を回して斜め後ろを確認する。

「その……審神者殿……」
私の目には、あの三日月宗近が少女のように照れているように映った。

(終わった…………)

 ありえないレベルの素の姿をいきなり晒してしまった。しかも天下五剣相手に。

「……………(今のはどうか見なかったことに)」
「……………(あいわかった)」

 沈黙の中、目線でやりとりをして、なにもなかったことにすることにした。なんとでも言ってくれ。私は自分の尊厳を守るためなら、審神者としての立場を利用して箝口令だってなんだって敷くぞ。

 しばらく経った後、三日月さんが咳払いをした。
「審神者殿、先ほどのことは忘れるから、なるべく急いでこの屋敷の結界の補強を……」

 失礼かもしれないが私は彼の言葉を遮って叫んだ。

「結界ですね!!今すぐかけましょう!!」

 そういえば、ここに来る前も彼の話途中に返事をしたな…重ね重ね失礼な主人で申し訳ない天下五剣……
/ 13ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp