第1章 簡単なお仕事です
家を追い出されて審神者になることになった。
複雑な事情がある訳じゃない。
裕福な家庭じゃないから、両親もいつまでも私のような引きこもりニートを養っていられなかった、それだけの話。
毎日、布団の中で丸まって怠惰に日々を過ごしていたら、私の預かり知らぬところで審神者として就職することがとんとん拍子で決まっていた。
根暗、体力なし、学歴なし、人並みの霊力……おまけに不器用で要領が悪い人間。それが私である。
審神者になるためには事前講習を受ける必要があるのだが、そこでも私は教師役となる役人を何度も困らせ、早々に落ちこぼれの烙印を押された。
似たようなことは人生で何度も繰り返してきた。指示された通りに周りと同じことができないのも、色んな人に落胆され馬鹿にされ励まされるのもよくあることだった。
講習での苦い思い出はたくさんあるけれど、無能なりになんとか就任のための最終試験に合格した私はついに現世と本丸を繋ぐゲートの前に立っていた。
あまりのポンコツぶりに政府の人が気を回してくれたらしく、このゲートの行き先はというと、もうあらかた刀剣男士が揃っているという本丸だった。
要は引き継ぎ役。
同期たちはイチから初期刀とともに本丸を築いていかないといけないなか、私は既にいる刀剣男士たちと上手くやっていきさえすればいいらしい。
これは仕事が少なそうだ、めんどくさがりな私にぴったりである。落ちこぼれにも優しい時の政府さんありがとう…!