第1章
ある夜、とセバスチャンは、
絡み合ったまま横たわり余韻に浸っていた。
汗ばんだ肌が触れ合い、互いの息がゆっくり重なる。
激しい愛の後、部屋には甘い静けさだけが残っていた。
セバスチャンはの髪を優しく撫で、
微笑みながら彼女を見つめた。
彼の指先が、の頰をなぞる。
「……愛してる」
数え切れぬ年月を生き、魂を喰らい続けてきた。
恋愛など、演技でしかなかった。
人間の欲望を弄ぶ道具でしかなかった。
なのに、を前にすると、胸が熱くなる。
これは魂を狙った策略ではない。
ただ純粋に、彼女が愛しい。
は彼の胸に顔を寄せ、目を閉じた。
セバスチャンの心臓の音が、耳に優しく響く。
彼女も小さく微笑む。
「……私もよ、セバスチャン。
あなたを、愛してる」
かつて人間だったには許婚がいた。
幼いながらに、その人を愛していた。
本気で、永遠を信じていた。
なのに、強制的に別れさせられた。
攫われ、檻に閉じ込められ、吸血鬼にされた。
愛は、痛みだけを残した。
もう、好きな人はいらない。
心を閉ざし、孤独を選ぶ方が安全だと思っていた。
それなのに
セバスチャンに出会い、惹かれ合った。
彼の血が、彼女の渇きを満たすだけでなく、心の隙間までを埋めた。
彼の優しさ、悪戯な微笑み、守るという約束。
すべてが、の凍った心を溶かした。
永遠の孤独を背負ったはずの自分が、
また、誰かを愛せるなんて。
愛されるなんて。
はセバスチャンの胸に指を這わせながら囁いた。
「……もう誰も愛さないって決めてたの。
孤独でいいって思ってた。
なのに、あなたが……私の心を開いてくれた。
幸せすぎて怖いくらい。」
セバスチャンは唇を優しく重ねた。
「私は、自分が恋など知るとは思ってもみませんでした。」
は彼の頰に手を触れ、
「……私たち、似てるわね。
心を閉ざして、生きてきたのに……
お互いを見つけて開けた。」
セバスチャンはを強く、優しく抱きしめた。