第1章 彼はあの子の王子様
「郁は防衛員に向いてると思いますよ。誰よりも正義感が強いですから」
「だってさ、堂上」
「なんで俺を見るんだ、お前ら」
堂上教官はむっと口を結ぶが、言っていいのかな。
本人的にあまり触れられたくないことでは。
けど、わかっていないみたいだしいいか。
「だって、堂上教官は郁の"王子様"でしょ。あ、タメ口。すみませ……」
「ぶはっ!!」
上官にタメ口をきいてしまったことに焦り、謝ろうとした瞬間、小牧教官が噴き出した。
堂上教官はというと、箸を握り締めてわなわなと震えている。
やっぱり言わない方がよかったかもしれない。
「なんで、お前がそのことを……」
「え、だって、あの時私も一緒にいたし……。面接の時も堂上教官いました、よね。小牧教官も……」
「覚えてるのか」
「覚えてますよ、そりゃ。衝撃的でしたもん。あ、安心してください、郁は何一つ覚えてません。それどころか日に日に思い出が美化されてます」
「安心できるか!!」
「ちょ、それ以上、しゃべ……くっ、ふふ、おなかいた……」
お腹抑えて今にも笑い死にしそうな小牧教官をよそに、私は「ごちそうさまでした」と手を合わせた。
午後の訓練があと少ししたら始まる。
ゆっくりと食べすぎちゃった。
私は堂上教官と小牧教官に「お先に失礼します」と挨拶をして、食堂を後にした。
その間、小牧教官の笑いがおさまることはなかった。