第1章 彼はあの子の王子様
「腕下げんな、笠原ッ!!」
名指しで飛んだ罵声に、本人ではないのに背中が反射的に伸びる。
名前を叫ばれた当の本人は私より少しだけ先を走っている。
約5㎏ある小銃を抱えて走るのは22歳の女子には少しばかり……いや結構かなりきついというのに、男子隊員の先行集団に追いすがっているのだから、すごいという感想以外でてこない。
「早乙女!!ぼんやりするな!!訓練中だぞ!!」
「はいっ!!」
親友の事を考えていたことが教官にバレた。
体力も気力も限界に近いが、気合を入れなおしラストスパートを走り抜けた。
ゴールした私は、隊列を作って座っている男子の後ろに回って休む。
50人中23位。
女子の中では2位か。
親友である笠原郁はというと、ゴール直後倒れ込んでしまったらしく罰として腕立てをやっていた。
まあ、これに関しては郁が悪い。
ゴールしたら目的達成という訳でないからね。
全員のハイポートが終わる昼の休憩だ。
グラウンドに正午のサイレンが響いた。
これが合図。