第1章 名を呼ばう
――それはそれとしても、いまさらそんなに オフィーリア・ シダルを名で呼び付けたいのかとリヴァイが自身の胸に手を当ててみれば、全く以てそんな事もないから困りものなのだ。一体なんなのだろうか、この感覚は。
リヴァイが浅いため息を吐いたのと同時に、彼が旧調査兵団本部にて執務室として使用している部屋の扉をノックする者があった。
「失礼します。 オフィーリア・ シダルです」という名乗りが続く。リヴァイが入室を許可すると、トレーを提げた オフィーリアが敷居を跨いだ。
そう言えば、紅茶を淹れて来るよう頼んであったのだった。
「紅茶をお持ちしました」
紅茶を供する オフィーリアの仕草は、新兵ながらに既に特別作戦班にも迫る討伐数を挙げている兵士とは思えないほど優雅だ。つくづく、 オフィーリアの両親は彼女をよほどしっかりと教育したのだろうと伺える。
ひと呼吸を置いて、 オフィーリアが淹れた紅茶に口を付ける。
花のような香りと、柔らかな渋み、それからすっきりとした後味。
あいかわらず、「悪くない」紅茶を淹れるガキである。
「……悪くない」
「ありがとうございます」
嬉しそうに目を細めて、彼女は折り目正しく礼をする。
「茶器は半時間後、下げに参ります」
「ああ……助かる」