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ネコの運ぶ夢

第13章 家につくネコ


「おや?」
俺はわざとらしくあたりを見回してみせた。
「どうかなさいましたか?」
京介が声をかけてきた。

「いえ、何やらネコの泣く声が聞こえたような気がしまして」

こころなしか、音子の肩がビクッと反応したように見えた。

「はて、我が家にはネコはおりませんがね」
「はは・・・じゃあ、気のせいですかね。昔、私もネコと暮らしていたもので、つい」
「おや、ネコをお飼いになっていた?」
「そういえば、お父様、うちにもいましたよね。エジプシャン・マウのビビ。血統証付きでしたのよ」
いちいち嫌味ったらしいな。スネ夫かお前は。

「さすが中条のお家ですね。浅学につき、エジプシャン・マウという種類は存じ上げないですがね。我が家にいたネコは元々私が拾ってきたものだったので、どこで生まれて、どこで育ったのかも分かりません。でも、そんなのは気にならないほど、とても可愛かったです。」

音子がじっと唇を噛む。

「それは大事なペットだったんですな」
「ペット、ではなく、うちでは『家族』と言っていました。こちらでは違うのでしょうがね。庶民の発想かもしれません。」

そして、心を込めて言う。
伝われ、音子に。

「いつも、私の近くにいてくれました。嫌なことがあったときも楽しいときも、ただ、いてくれました。なにか、役に立つとか、そうではなくて、そばにいるだけで愛おしいと思わせてくれる、そんな存在でした。」
「まあ、随分溺愛なさっていたのね」

「ええ、愛していました。この上なく・・・。世界で一番です。」

俺は音子の方を見て言った。
視線の先の彼女は顔を伏せ、肩を震わせていた。
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