• テキストサイズ

ネコの運ぶ夢

第8章 ネコは残業を待てない


音子は家に帰ってからも、ぐったりしており何も言わない。意識はあるようだが、心配だ。
「おい、大丈夫か?音子?」
温かいお茶を飲ませようとするが、手が震えて、うまくカップが持てないようだ。

済まない、済まない・・・申し訳ない・・・。
とにかく心の中で謝り続ける。

まさか、俺が帰ってこないと思って、あんなにも不安になるだなんて。
不安で不安で、どんなに体が冷えても、あそこから動くことができなかったのだろうと、容易に想像がつく。

結局、うまくお茶を飲むことができなかったので、それは諦めて、俺はひたすら音子の体を擦り続けた。

そうこうしているうちに、風呂が沸いた。
「音子、風呂に入れるか?大丈夫か?」
ゆっくり音子が頷く。肩を貸してやりながら、風呂場まで連れて行く。前にも説明したが、うちは脱衣場なるものが明確に区切られていない。本当は、音子に風呂を使わせるなら、俺はリビングにでも行ってなければならないのだが・・・。

「音子、すまん。服を脱がせるぞ」
この状態でひとりで風呂に入らせるのは非常に不安だ。
音子はそっと頷く。

本人が良いと言ったとはいえ、さすがに裸身を直視するのはまずいと思い、目を背けながら服を脱がせようとする。ワンピースは前にボタンが有るタイプだったので、背中側から脱がせようとしてもどうしても胸に手が当たってしまう。

まずくないか?これ・・・。

一瞬、そういった思いが頭をよぎるが、そんなこと言ってる場合じゃない。
俺は思い切って、音子のワンピースを脱がせ、下着も脱がせる。

こいつ、意外と着痩せするタイプ・・・。
って・・・バカ、バカ・・・何考えてるんだ、俺。

腰が立たない音子を、抱えあげるように風呂場に入れる。一人暮らしの狭い風呂場だ。風呂椅子に座らせ、洗面器に風呂のお湯を汲む。少し、水を入れ、ぬるま湯にする。

急に温めると良くない気がする。

ぬるくしたお湯を少しずつ、音子の身体にかけていく。
一応、背中の方にいるから、胸などは目に入ってはいないが、なめらかな音子の身体をお湯が流れ落ちる様はかなり艶めかしい。

心を無にしてお湯をかけ続ける。
気分は禅僧だ。
/ 52ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp