第8章 ネコは残業を待てない
大分温まったと思うが、どうだろう?
「音子・・・風呂に入れそうか?」
尋ねると、音子は頷く。よし、よかった。
「じゃあ、ゆっくり入って。俺は、あっちで待ってるから」
風呂場を出ようとすると、ギュッと服の裾を掴まれた。
「ここに・・・いてください・・・」
なんですと!?
「すいません・・・今日だけ、このあとはわがままいいませんから・・・私の側にいてください・・・」
まだ、ガタガタと肩が震えているのを見て、俺は観念した。
どうせ、俺の服は、この時点でびしょ濡れだ。風呂の戸を開けたまま、戸口に腰を下ろす。一応、音子が風呂に入るために立ち上がったときは目を閉じた。
そのまま、音子は20分ほども風呂に浸かり続けた。