第2章 弱音
そうして店を出た二人はただ一定の距離を持ったまま並んで歩いて居た。そのまま、ゆっくりとした歩調のまま、広い公園に向かっていった。
「…雅?」
「んー、何?」
「さっきの電話、さ?」
そう話しかけた時だった。雲行きが大分危うくなり始めたからというのもあって、周りの人はまばら、そしていつもに比べてもそう多くはない中でもう一度電話が鳴り出す。
「…もぉ…」
通話に出る事も無いままにぷつっと切れば鞄の中に押し込んだ雅。
普段は放っておかれる、自分の都合のいい時にだけ雅を呼び出しては暇つぶしの様に抱くことはあっても雅のペースになることは最近ではほとんどなかった。恐らく今夜も部屋に行けば抱かれて終わる…そう思っていた。
「…雅」
そんな時にジュンスの優しい声色が鼓膜を揺さぶってくる。
「ごめん…放っておいて…別に大丈夫」
それが雅のいつもの強がりだとジュンスは見抜いていた。そっと手を取ろうとして少しだけ指先が触れた時だ。雅は少しだけ乱暴にその手を払う。
「…やめて…優しくしないで…今は無理…」
言葉の意味が解らないわけでもない…
ただ、今ジュンスに触れたら何かが壊れるような気がした…
触れたら…触れられたらきっと泣いてしまうから…
甘えてしまいそうになる…
そうなればジュンスにも嫌われてしまうだろう…そう雅は思っていた。しかし、ジュンスは差し出しかけた手を引くことないままにそっと…雅の指を掬い取った。