第1章 いつか夜が明けた時には
その音に、ファイと黒鋼だけでなく、も驚いていた。
無意識だった自分の行動に驚いたのだ。
「あ……すみません、ファイさん……!
私、そんなつもりじゃなくて……」
「オレこそごめんね、驚かせちゃったね。
オレも黒様もキミを傷付けるつもりはないから、まずは服を直そっか」
ファイは全てを察するように、いつもの仮面のような笑顔を見せた。
は少し冷静さを取り戻し、ファイと黒鋼がたくさんの傷を受けていることに気付いた。
「本当にすみません……ありがとうございます……」
は、安心感からまた涙を流し、そのまま意識を手放した。
「……気を失っちゃったみたいだねー。
ちゃんは、こういう体験に慣れてないみたいだし、怖い思いさせちゃったし仕方ないかも」
「お前が小娘を抱えてけよ。
とうせ、大して戦う気もねぇだろ」
そう言うと、黒鋼は歩みを始めた。
「えー、黒ぷー、それはひどくないー?
さっきの秘妖さんとの戦い、オレも頑張ったじゃないー」
軽口を叩きながらも、ファイは手早くの服を直し、まだ目元に残る涙を拭った。
少し穏やかな顔になったように見えるを、ファイは横抱きにして、黒鋼を追いかけたのだった。
---fin---