第5章 重症:ファイside
オレにも、人間を使ったチェスというゲームに対する嫌悪感はある。
ただ、それ以上にオレには自分の命にも嫌悪感がある……。
流石、アンダーグラウンドのゲームということもあり、怪我なく終われることはない。
大体、ちゃんが救急箱を用意して待っていてくれるが、なるべくオレは自分で済ませて早々に部屋に戻る。
……これ以上、関わりたくないから。
彼女が意識的にオレに血をくれているのはわかっている。
そのせいか、最近は顔色が良くない。
それでも、どこか血をくれるのを待っているのは、
その瞬間がちゃんと触れ合える数少ない瞬間になっているからかもしれない。
矛盾だらけだ。
部屋の扉がノックされる。彼女だ。
「あれ、今日もキミなんだ。
そろそろ黒鋼が来るかと思ってたよ」
あぁ、オレはこんなことにも嘘をつくのか。
扉の前に立っているのがちゃんだってわかっていた。
ちゃんに来てほしいと思っているくせに。
僅かばかりの抵抗で、オレは君の名前を呼ばない。
それに意味があるのかさえ分からないけれど。
「……すみませっ……」
……どうしてちゃんが謝るんだ。
無性に腹が立った。