第4章 深すぎず浅すぎず、近すぎす遠すぎず
翌週。
がランドセルを開くと――
入れておいたはずの折り紙が消えていた。
教室の後ろで、
女子たちがひそひそ笑っている。
「ねぇ〜見た〜?、泣きそうじゃない?」
「かわいそう〜。でも仕方ないよねぇ。」
みさきちゃんもそこにいた。
でも、目が合った途端、
すっと視線を逸らした。
(……みさきちゃん……)
その時は、
胸がぎゅっと小さく締めつけられるのを感じた。
“仲良しの友達”が
“ただの同級生”になった瞬間だった。
⸻
事件が起きたのは、体育の時間。
女子グループが、
わざとの靴を隠した。
「え、靴ないの?」
「ってドジだよね〜」
みさきちゃんは、
困ったように笑いながら言った。
「……探せば?」
本当は知っているはずなのに。
隠したのが誰なのか、
どこにあるのかも。
(なんで……そんな顔するの……)
は探し続けた。
でも見つからない。
その時――
「……これ、落ちてたよ。」
白い運動靴を手にした女の子が現れた。
髪をツインテにし、
笑顔が明るい子。
「あなた、ちゃんでしょ?
靴、わざと隠された感じだったから……届けにきた!」
「……ありがとう……」
の声は震えていた。
その子は、胸に手を当てて名乗る。
「わたし、ミナ!
困ってる子、そのままにできないの!」
はじけるような笑顔。
その裏にある、真っ直ぐな優しさ。
その日の放課後、
ミナはの隣を歩きながら言った。
「ねぇ、わかってるよ?
あの子たち、ちゃんのこと妬んでるだけだよ。」
「妬む……?」
「うん。
ちゃん、大人っぽいし、男子にも女子にも人気あるし。
あれだけ可愛かったら、そりゃあ意地悪もされるよ。」
(……可愛い……?)
は目を丸くした。
「でも安心して。
わたし、ちゃんの味方だから!」
その宣言は、
幼いのにあまりにも頼もしくて――
の胸があたたかくなった。