第3章 はじめましての訓練
公安に保護されてしばらく経った頃、の生活は完全に変わった。
朝は決まって、薄い電子音で目が覚める。
白い壁、四角い天井、淡いベージュのカーテン。
ここは家じゃない。
でも、敵が来ない“安全な場所”。
家具は最低限で、ぬいぐるみも家の匂いもない。
だけど、公安の人たちは優しかった。
朝食のたびに、職員のお姉さんが言う。
「今日もよく眠れた?」
は小さく頷くだけ。
声を出すと、胸がぎゅっと痛むから。
廊下の角には必ず監視カメラがあり、天井には薄い照明が灯っている。
職員たちはみんな灰色のスーツを着ていて、その雰囲気はどこか病院に似ていた。
恐怖を忘れるほど暇ではなく、
悲しみに浸る余裕もない。
毎日が音の少ない世界。
静かすぎて、心がどこに置かれているか分からなくなってしまいそうな場所。
だけど、唯一空気を変える存在がいた。