第3章 はじめましての訓練
「ちゃん、今日から彼――ホークスが、君の個性の安定と訓練を手伝ってくれる。
君はまだ幼く、不安定な個性を持っている。過度な負担を避けるためにも、彼と行動することが多くなるだろう」
その言葉に、の小さな肩がまた震えた。
「……ほぼ毎日……?」
委員長は優しく頷く。
「君が怖くないと思えるまででいい。ゆっくりでいいんだよ」
ホークスがに向かって、手を差し出す。
でもその手は、握られることを期待していない。
ただ、そこに“置かれている”だけだった。
「案内するよ。君のペースで歩くから」
はしばらく迷った。
でも、逃げたいほどの恐怖ではない。
初めて、ほんの少しだけ安心できる気配がそこにあると感じた。
小さく息を吸い、そっと立ち上がる。
ホークスの後ろを、少し距離を空けながらついて歩く。
廊下に広がる赤い羽根が、まるで落ち葉のように優しく舞う。
その音は、不思議と耳に心地よかった。
「大丈夫。君が怖くないと思えるまで、ずっとそばにいるよ」
少年はそう言い残し、を振り返って優しく笑った。
こうして、
失ったものばかりの世界で、にとって初めての“新しい誰か”が現れた。
それが後に、彼女の心に深く刻まれる――
家族とは違う形の“支え”の始まりだった。