Welcome to『Whale Hole』 u/s/s/s
第1章 Welcome to『Whale Hole』
ライブが終わった後の夜は、いつも静かだった。
照明が落ち、歓声だけがまだ空気の奥に残っている。
楽屋の隅では、マネージャーのがひとり、機材のチェックを終え、メンバーの私物をまとめていた。
仕事の段取りを確認するその手つきは落ち着いているようで、しかしどこか疲労がにじんでいた。
そこへ──
う:「あのさ、今いい?」
背中越しに落とされた声に、の肩がわずかに揺れた。
振り返れば、気怠げな目を向けるうらたぬきが立っていた。
は軽く笑って返すが、うらたの目は普段より深く、どこか探るようだった。
う:「俺たち、さ…いつもファンの前で笑ってるじゃん?……はどう思ってる?」
唐突な問い。の表情が固まる。
「え……どうって……プロだなって。ちゃんと向き合ってて……すごいと思うよ?」
う:「そっか。ありがと」
返した笑顔は柔らかいのに、目だけが妙に暗い。
うらたは少し視線を落とし、手元のペットボトルを指先でそっと押しつぶすように握り直した。
無意識に力がこもる、そのささやかな音が沈黙の中で妙に生々しく響く。
は胸の奥がざわりと揺れるのを感じた。
う:「……俺らさ。の前では、ずっと“仕事の顔”してるじゃん?」
の眉がかすかに動く。
問いの意図がつかめずに、返事を探して沈黙したその隙を──うらたは逃さない。
う:「だから俺らのこと、ちゃんとした節度を持った人として見てるでしょ?」
「…え?だって…私はマネージャーだし。みんなの事はちゃんと見てるつもりだよ?だから表とか裏もちゃんと知ってると思ってるんだけど…違うの…?」
う:「そうだね…きっと知らないと思う」
うらたはゆっくりに向き直り、少しだけ距離を詰めた。
う:「だから…裏の俺たちをちゃんと見て欲しい…一人の“人間”として見て欲しいんだよね」
突然の“本音”に近い言葉に、は戸惑いを隠せない。