第4章 残る想いと結ぶ誓い
――「倒れたから看病してた。」
舌打ちこそしないものの、面倒くさそうに眉が寄った。
「……ほんま、体力ないやっちゃな。」
文句混じりの声だが、腕は驚くほど優しく仁美を抱え上げる。
湯から上がり、直哉はシャワーを出して仁美の髪や肩、背中についた汗を流していく。
「じっとしとけ。落ちるで。」
途中でモゾッと仁美が動けば、直哉が支える。
軽く水気を拭き取ると、直哉は仁美をそっと布団に横たえる。
その瞬間直哉は気付いてしまう。
仁美が“誰かに預けられる側”で生きてきたことを。
身体を任せる角度、呼吸の落とし方、弱るたびに他人の手を受け入れてきた癖。
直哉の喉奥で、くぐもった感情が揺れた。
(……悟くん。こういうとこまで見とったんか。)
苛立ちとも、嫉妬ともつかん感情が胸の底でくすぶる。
「……ほんま、あいつの癖ついてんの腹立つわ。」
そう呟きながらも、直哉は仁美の枕の位置を整え、乱れた髪を耳にかけてやる。