第3章 愛と義務
着物の着崩れを心配して仁美が直哉の手を止める。
そんな仁美に直哉は目を細めて言った。
「着物はな、脱がんでも何でも出来るように作られとるんや。昔の連中は、そのまんま全部済ませとったらしいで。……合理的やろ?」
窓際に置かれた、黒檀の腰高の棚に手を置きながら、彼は低く言った。
「ここ、座り。」
仁美が言葉を返す前に、直哉の手がそっと腰を支えた。
直哉は仁美の体を自分の方へ一度引き寄せ、その反動を使って、そっと棚の縁へ腰を下ろさせた。
畳とは違う固い木の感触が、着物越しに伝わる。
向かいあった直哉の顔がまた近づいてきて舌を絡める。
ちゅっと舌を絡めながら、今度は先程より強引に襟元から手を入れると仁美の胸を着物から出した。
着崩れなど気にもしないで、帯を解く手間さえ惜しむように、直哉は現れた白い乳房を握ると親指で突起を弄ぶ。
「んっ…あかん…っ、直哉…っ。」
キスを続けたまま指先で乳首を弾くと、もう片方の手は肌触りのよい着物の裾の奥に入っていく。