第3章 神様ありがとう
『行ってきまーす』
「しっかりね!いってらっしゃい」
朝から衝撃の事実に混乱と不安と、大いなる歓喜を抱いて私は、勤務先となる上忍待機所へと向かうのだった。
少し歩いた所で、はたと気づく。
さて、どうやっていくのだろうか。
太巻瑠璃25歳。
久方ぶりの迷子である。
人通りの多そうな道へと進んでいくと、
賑やかな通りへと出た。
見たことある…。
見たことあるの!
『酒酒屋…あ、あれは甘味処…あれってあれって一楽!!』
嘘じゃなかった。
私の手のひらの中で繰り広げられる漫画の世界に…本当に来たのだと、私は目の前に広がる町並みに感動していた。
いい大人が、ひとつひとつの店に感動している様は何とも異質な光景なのだろう。
『は!仕事!』
すっかり夢の世界に浸っていた私は、肝心の仕事場への行き方が分からない事を思い出す。
そこでふと、アカデミーの近くにあるという、設定資料集を思いだし、辺りを見渡すと…。
『顔岩…。すごい!顔岩です!顔岩ですよ奥さん!』
まったく関係のない、通りがかりの女性に絡んでしまうあたり、もはや冷静でないことはあきらか…。
『綱手様がほられてるってことは…そうか、3代目はもう亡くなった後なんだ…』
木ノ葉崩しの後ということになる。
優しくて強い3代目…
好きだったから、実際に会って話をしてみたかったな。
少しの感傷に浸りながら、顔岩の下に位置するアカデミーをみつけ、見失わないように確認しながら歩いていく。
人生色々…人生色々…
なんてことなの!?人生色々よ!
こんなうまい話があるの?ねぇ!あると思いますか?
「ど、ど、どうなんでしょう?」
心の中での叫びが、外に漏れてしまっていたことに気づき、またも声をかけてしまった通りすがりの方へ私は頭を下げて謝罪した。
『す、すみません。気になさらないで下さ……い……』
顔を上げた目の前に居たのは…。
『な!?…ありがとうございます……』
「え!!ちょ、ちょっと!!」
春野サクラさん…。
ピンクの髪の毛が…素敵でらっしゃる…。
遠のく意識のなか、NARUTOの世界であることを確信し、神様へと感謝の言葉をのべるのだった。