第9章 いざ、波の国
マイは火影の言葉に、落ち着いて頭を回転させる。
カカシは合理的主義の忍である。任務遂行のためにはどのようなルートが最適かを瞬時に見極め、仲間を切り捨てることもやむ終えない…という所がある。
しかし、今のカカシは仲間を見捨てる事は決してしない。ということは…ナルト達が任務遂行に問題ないと判断したうえでのことであろうとマイは分析した。
『分かりました…でも…もしも!』
「何かあればお主に伝えよう…。」
失礼しました…。
元気のない声でそう告げると、マイは火影室を後にした。
マイが部屋から出ていくのを見届け、火影は改めて深い溜め息を吐いた。
「ザブザ…のことは伏せておいて正解じゃったな…。」
――――――……
その後受付に戻ったマイは、やはり仕事が手に付かない様子で、そのまま終業時間を迎えた。
イルカに飲みに誘われたが、どうもそんな気にもならず、一人家路についた。
しかし、気づくとナルトのアパートの前に立つマイ。
昔から勘の鋭い方だった。忍として、暗部として時に命を救ってくれた自らの勘の良さ。
警告している。
危険を…警告している。
里を出ていく時の、一瞬のタズナの表情を見逃していなかった。
これはもはや職業病。しかし、人よりも敏感なマイは、カカシさえも気がつかなかった、タズナの戸惑った表情が気になってしかたなかった。
結果…Cランク任務ではない、恐らくBランク以上になるであろう任務に、ナルト達は巻き込まれている。
信じていないわけではない。
カカシの実力も、ナルト達の成長も…。
しかし、マイは怖かったのだ。
大切な人が目の前から
ある日突然いなくなる…恐怖を…
恐れているのだ。
『皆…生きて帰ってきて…』
マイは、透き通る夕暮れの空を見上げ
心から祈った。