第5章 悩める男心
カカシは不貞腐れて問いかける。
「あのさ~アスマは、いつからマイちゃんと仲良くなったわけ?」
「仲良くってわけじゃねぇけど…
受付にいりゃ顔見知りにはなるだろ」
ふ~ん。と、返してくるカカシだが
納得しているとは到底思えない様子である。
「それにしても…お前が女の事を聞いてくるなんて珍しいな。来るもの拒まず、去るもの追わずじゃなかったか?」
アスマの問いかけに、眉を寄せる。
世間での噂は、聞きたくなくても耳に入ってきてしまう。
「別にそんなんじゃないよ」
「お前がまともに好意を持ってたのは
アイツが最後だろ…。」
アイツ…。
アスマの言うアイツとは、翠月マイの
ことであろう事はカカシには容易に理解出来た。
「アイツが死んでから、お前本当いい噂聞かねぇからな」
カカシは更に眉間の皺を濃くする。
「そんなの…周りが勝手に言ってるだけでしょうよ。」
「アイツが生きてたら…どう思うのかね」
ガタッ!!!
気づくと、カカシはアスマの胸元を掴み上げていた。
その様子に、周りの者たちの視線が一斉に集まる。
「そんなこと…お前に関係ないだろ!」
「そんな気持ちで、マイの事を嗅ぎ回ってんじゃねぇよ。昔の想いも整理しきれねぇで、次から次へとガキかお前!」
乱暴にアスマを離すと、カカシは待機所を後にした。
アスマは、去っていくカカシの背中を見つめ、たばこに火をつける。
「あの野郎…殺気駄々漏れにしやがって…嫌な汗でちまった…」
マイに対して好意をもっているのは、知っていた。マイの死によって女遊びが激しくなったこと、暗部への入隊。自暴自棄になっていることは知っていた。
しかしアスマは、昔のカカシを純粋に鮮明に想っているマイの事を考えると、今のカカシに苛立ちを覚えたのだ。
「それにしても…結局は惹かれ合うのは、運命かね…」
アスマは苦笑しつつ、たばこをふかした。