第3章 葛藤
水流園マイは第三次忍界大戦で
死亡したことになっている為、
容姿を隠す口布をするにあたり
傷跡を隠す為…という伏線を引いたのである。
火影は、正体を明かし暮らしてもよいと言ってくれたのだが、水流園一族という名が、木ノ葉へ少なからず危険を呼び寄せてしまうことを
マイは良しとせず、頑なに拒んだ。
木ノ葉で任務をこなしていた頃から
何年もたち、すっかり大人の女性に
なったとはいえ、
自分を知る者の前では口布は頑なに取らないのだが、
ナルトには、例え完全でないにしろ
素顔を晒すことにしたのだ。
それは、自分を信じてくれたナルトへの
マイなりの歩みよりであった。
傷跡は、忍術でもつけられるが
鋭い者には感ずかれる可能性が高かった為、
特注で、特殊メイクの傷跡タトゥーを
使用している。
「ゴチソウサマだってばよー!」
『御馳走様でした…』
朝食を食べ終えた二人は、
ナルトの支度を終え、
揃ってアパートを後にした。
アカデミーへ向かう道中、
おもむろに走り出したナルトは
くるっと振り返り
「俺ってば、俺ってばさ!
絶対火影になるから…
火影になって、皆を見返して
そんでそんで…
マイ姉ちゃんが口布をとっても
幸せに暮らせるような里にするってばよ!」
照れ臭そうにはにかみ、
一人走っていくナルトの背中を
驚きに目を開いたマイは
暖かな気持ちに胸をいっぱいにしつつ
正面に立派にそびえ立つ四代目火影の
顔岩へ視線をうつし
『先生…貴方の息子は
こんなにも眩しい太陽になりましたよ…』
と、小さな声で呟いた…。
絶望の淵にいた自分を
木ノ葉は暖かく包み込み…
小さい身体で
あまりにも大きな運命を背負った少年の
生き様に励まされ…
マイは
木ノ葉の忍であることに
この上ない幸せを感じていた。
「マイ姉ちゃ~ん!!
遅刻するってばよ~!!!」
『は~い!』
二人を見つめる様に
火影岩は日に照らされ艶めいていた。