第13章 交錯する想い
『ちょ…カカシ…あの…さ、大丈夫だから…「大丈夫じゃないだろっ!!」
有無を言わさずマイの言葉をかき消すように、カカシは言葉を重ねた。
「大丈夫大丈夫って…自分に言い聞かせるのはもう辞めろよ!!」
『カカシ…』
「甘えたっていいじゃないか!!お前が倒れたら支える…挫けそうなら寄り添う…お前は木ノ葉の水流園マイなんだろ!?」
どうして…分かってしまうんだろう…
どうして…いつも…ほしい言葉を…
くれるんだろ…
でも…好きになっては…いけないの…
これ以上…好きになったら…
私はきっと…
醜くなる…。
カカシの背中にまわそうと伸ばした腕を、マイはぐっとこらえ、カカシの胸へと押しやると、突っぱねるように離れた。
「マイ…」
『ありがとう…カカシ。そうだね、私過信しすぎてた。』
素直に飛び込めたら…いいのに
『今は皆がいるもんね…一人で戦ってるんじゃないんだもんね』
だからもう…見ないで…
『よし!とにかく今は火影様を待って、これからのことを考えなきゃね』
気づいてしまわないで…
だって…きっと今の私は
女の顔をしている…。
―――――……
マイが塔の階段をあがっていく後ろ姿を見つめながら、入り口でカカシは佇んでいた。
思わず抱き締めてしまったこと…
突っぱねるように離れたマイ
視線を地面に落としたカカシは…
自分の図々しさに乾いた笑いを漏らす。
「支える…寄り添う…?俺がよく言えたもんだよ…」
散々女遊びをしてきた自分の言葉に、何の重みがあるのか…。
忍として、努力を惜しまず必死に力を磨いてきた。
上忍はたけカカシとしての想いは伝わったとしても、一人の男としては伝わるはずもない…。
あの日の夜の出来事と、イルカと笑い合う姿が、頭から離れないでいた。
面の下は…どんな顔だったのだろう…。
カカシは邪念を祓うかのように、頭を左右にふる。
「こんなときに…俺はいつから私情をはさむようになったのかね~」
両手で気合いを入れるように頬を叩くと、カカシも塔の上層階へと向かうのだった。
交わるはずの想いは…
まだすれ違うばかり…。